【魔道祖師】原作+メデイアミックス駆け抜け感想
原作小説、アニメ、陳情令(スピンオフ2作含む)を一気に駆け抜けたので、各媒体まとめて感想を書いてみる。ラジオドラマは未履修。
なおネタバレを思いっきりしますが、この作品はネタバレなしで読むのが一番面白いと思っているので、未読の方には非推奨の記事です。
おすすめ履修順について考える
原作+メデイアミックスを短期間で立て続けに駆け抜けた。私はアニメ→陳情令→原作小説の順で履修してしまったが、個人的には各媒体履修するなら原作小説→メディアミックスの流れがわかりやすいだろうなと感じる。
後の項で各メディアの違いについて触れるが、メディアミックスは構成や設定がかなり変わっているので、わかりにくくなっている箇所や原作と印象が違う場面、設定違いの部分が多い。中国の表現規制の都合もあってBL要素がかなり薄められてしまっているというのもある。
原作小説は構成的にもわかりやすいし、当然BL要素も残っているし、ものすごく個人的に耳で聞いてるとキャラクター名が全然覚えられなかったのでずっとフリガナがついているのもありがたかった。メディアミックスを見ていると当然展開がわかってしまうわけだが、その状態で小説を読むともったいないことをしてしまった、とかなり後悔した。この作品はネタバレなしでジェットコースターに身を任せるのが一番体験として面白い。
全体の流れと二軸の展開
※以下、完全にネタバレがあります。
作品内容をざっくり表そうとすると「ホラー風味あり中華ファンタジーBLバラバラ殺人ミステリーライトノベル」。
公式ジャンルとしては「BLライトノベル」である通り、基本的には主人公二人の想いが通じていく様を描いたBL小説である(がっつり目の濡れ場もある)。ライトノベルらしいコメディタッチなシーンやお楽しみ描写もあり、文体も軽めに読める(翻訳体は少し慣れない感じはした。中国語からの翻訳小説の読書経験値が低いので、その慣れの問題もあるのかも知れない)。一方で、これでもかとドン底に落とすようないわゆる“地獄”の展開もどっしりとあり、緩急がクセになるストーリー展開をしている。中華BLは地獄になりがちな傾向があると噂に聞いたことがあるが、他の作品も気になるところ。
この作品の場合、BLライトノベル要素に加えて「バラバラ殺人ミステリー」がストーリーのもう一つの軸になっている。だからこそネタバレなしで読む方が楽しい。主人公二人のCPが成立することはジャンル特性上わかっているのでネタバレ的にはあまり問題ない。
主人公二人が探偵役となり、目の前に投げ込まれたバラバラ死体の身元と下手人を探っていく…というのがミステリー部分の軸。この作品がミステリー的なのは、最終的に、事件の全容と主人公二人にはあまり因縁がないという部分にも表れている。陰虎符の件など全く関係がないわけではないが、犯人役の金光瑶は探偵役の魏無羨にも藍忘機にも直接的な特別の関係があるわけではないし、被害者の聶明玦も二人とは生前大して絡みがあるわけでもないし、あくまで依頼者役の聶懐桑が二人を事件に巻き込んだからこそ物語が動いていく…という仕掛けになっている。この仕組みが、ブロマンス改作をされてもアニメや陳情令が成立しやすかった一つの要因だと思う。ミステリーを追っている内に二人の過去とそれぞれの想いが明らかになり、事件解決と共にBLの関係性も完成する流れ。原作はこの二軸の絡ませ方も上手く、読み応えがあった。
アニメ版の構成と改編
アニメは設定等は原作をほぼ踏襲しているが、構成の変更は大きめだった。原作のボリュームが厚いので駆け足気味なのは致し方ないと思う。アニメーションは綺麗で見やすく良かった。
気になる改編は二つ。
一つ目は過去編を一纏めにした構成になっていること。これは陳情令でも同じで、過去の流れをわかりやすくするための措置かな?と推察している。ただ、この構成だとミステリー部分(現代軸)がかなり長く断絶することになってしまい、現代に戻ったときに今どんな状態だったっけ?という状態になってしまった。アニメは約1クール分が丸々過去編になっているが、この忘羨の過去回想は現代軸の事件とは結局あまり関係が無いので、物語が分断されてしまっている感を強く感じた。聶明玦はともかく金光瑶の登場も相当遅くなってしまうというのもある(原作だとかなり早い時点で金光瑶に容疑がかかるし、二巻の前半で本人が出てくる)。また、過去編は本来連続した話ではなく、数年の間におきた出来事を小出しにする描き方だったので、一気構成にしてしまうと時間間隔がわかりにくかった。原作だと現代での状況悪化と過去編の状況悪化の対比も効いていたから、そこも少し惜しい気がする。
もう一つは江澄の金丹の種明かしが観音廟の"後"に変更されていること。この変更により、江澄の結末の印象が大きく変わっている。真実を知り、去りゆく魏無羨を見送る…というかなり喧嘩別れ色が強い印象だった。江澄、なんてかわいそうな…と思ったが、陳情令を見た際に展開が違ってあれ?となり、原作だと順番が逆だと知ってかなり驚いた。後の項でも書くが原作では観音廟で印象的な『ありがとう』と『ごめんなさい』のやりとりがあるので、魏無羨と江澄は元通りの関係には戻れないまでもある程度気持ちの整理がついた結末という印象になる。かなり印象が違うので、なぜこの改編になっているんだろう?と考えているがこれだと思いつくものがない。祠堂での三拝描写を最終回にやりたかったから?
陳情令の構成と改編
陳情令はアニメよりも諸々の規制が厳しいようで、屍の設定さえも変わっている。アクションシーンは派手で見応えがあるのと、どこをとっても美男美女といったキャスティングで眼福だった。
ストーリー改編については、話数や1話あたりの時間も長い分、丁寧に再構成しているなと感じた。過去編を一気にする構成になっているのはアニメと同様だが、孟瑶の聶氏所属時期を調整したり、独自設定の陰鉄を持ち込むことで過去編~現代編の事件を繋ぐ柱が生まれていた印象だ。暁星塵・宋嵐と魏無羨を直接接触させたのも義城編の唐突感が減って良かった(原作だとそもそも義城編が早い位置にあるが、アニメや陳情令の過去編一気構成だとどうしても後半に押しやられてしまうので、この期に及んで急に新キャラが何人も出てきた、という感覚になってしまう)。
聶懐桑の印象づけも濃くなっていたと思う。原作だと過去編での聶懐桑はあくまでノリの良い学友の一人、といった程度の絡みの印象だが、陳情令では一緒に事件に巻き込まれたりして出番がかなり増えている。座学の初日に小鳥を持ち込んでいる図太さ、とても好き。おかげで真相解明時のインパクトも大きくなる。さらに陳情令にはスピンオフ『乱魄』まであり、過去編時点の聶懐桑がただの役立たずではない味付けになっている。ただ『乱魄』だと懐桑がよかれと思って乱魄抄入り清心曲を明玦に聞かせてしまっており、地獄みが増しているのが味わい深い。それはあれだけのやり口で復讐をする…。
江澄に急に生まれたラブロマンス路線は相手がよりによって温情だったので、先の展開を思って江澄~…。となってしまった。江澄…。
『ありがとう』と『ごめんなさい』の儀式と因縁
話は戻って、以降は原作を軸に印象的な部分を。
特に後半にかけて、『ありがとう』と『ごめんなさい』が印象的に使われていたと感じた。
真っ先に思い浮かぶのは、乱葬崗から金鱗台に向かう温情が魏無羨に残した「ごめん。それと……ありがとう」。このやりとりで、魏無羨は江澄がどうしてあんなに「英雄気取り」の言動に腹を立てていたのかを実感を持って知ることになる。この気づきの描写がすごく良かった。
そして、観音廟での江澄と魏無羨のやりとり。陳情の受け渡しを介して交わされる、「すまない」と「ありがとう」。金丹の件を魏無羨が隠し続けていたことで最悪になっていた関係が、このやりとりによって若干の解決を見る。お互いに「すまない」と言うべきことがあって、お互いに「ありがとう」と言うべきことがある。どちらが先に約束を破ったかだとか、どちらがより悪いかとか、どちらがより感謝しなければならないとか、そんな因縁の応酬はあまりに複雑になりすぎていて、真っ平らに解決することはもう不可能。それでもここでお互いに言葉を交わしたからには一区切り。怨むに恨めず、感謝だけでもいられず、そんな複雑な心情が江澄と、あわせて金凌で描かれる。こういう一刀両断できない感情が大好き。
一方で金光瑶は『ごめんなさい』を言わなかったところが印象的だった。責められる度、彼はずっと「仕方が無かったのです」と言う。
この作品のさらに痛快なところは、『ありがとう』『ごめんなさい』、噛みしめたいな~と余韻に浸っているところで、忘羨二人が「二人の間にその言葉は不要」とさらにもう一歩突き抜けてしまうところである。そうだ、BLだった!!『ありがとう』と言いながらずるずると暗がりにおちていってしまった魏無羨、そのせいで『ありがとう』を恐れてしまった藍忘機。この二つの言葉で江澄との関係をある程度修復した魏無羨が、藍忘機とはもうそれすらも不要なのだとわからせられる最高の対比展開、痛快だった。
総じて
メイン二人以外のキャラクターも魅力的で、様々な角度から咀嚼しがいのある作品だった。キャラクターとしては特に三尊と懐桑のことを考えている。どうすれば良かったんだろう…と。
本編の後に全八編も番外編があるのも嬉しい。福利厚生。忘羨二人のいちゃつきをご褒美感覚で見守りつつ、江澄や金凌が大丈夫そうな様子が垣間見えて安心する…一方で立ち直れていない様子の藍曦臣がグサッときたりする。「なんだかんだ皆前向きに終わりました」にはしてくれない、番外編まで歯ごたえがある作品だった。懐桑の今後についてもぼんやりと考えている…。
多分今後も何度か咀嚼し直す作品になると思う。ちなみにかなり好みだったので勢いで同作者の別作品にも手を出し始めているところです。『天官賜福』3巻まで読みました、助けてほしい。
【あんスタ】≪1.5部夢ノ咲編まとめ⑦≫まとめにかえて:ズ!!今後のみどころ
※この記事は2023年3月12日時点(グラデュエーション予告前)で書いた内容をそのまま転載したものです。その後の実際のストーリー展開等は踏まえられていません。
2023年のテーマ『区切りの年』
2023年1月1日。恒例の公式年始ツイートで2023年は『4年目の区切りの年』と表現されました。その宣言に違わず、今年最初のひストイベントであるユニバースでは、ズ!!開始以来ずっと焦点のひとつだった鉄虎を中心とする流星隊の問題に一区切りをつけ、次のステージに進める『パワーアップイベント』でした。
さらに、3月15日からはトリスタ世代の夢ノ咲卒業を題材にしたイベントが開催予定です。返礼祭という毎年の区切りをなくして少しずつ物語を進めてきたズ!!で、いよいよ起承転結の結が展開されていくのだと思うと、これまでにない怒濤の展開が続きそうで非常にワクワクしています。
現在進行している中で今年区切りをつけるのかなと思っているところをあげてみます。
ゆうたを中心とした話題の解決
主にゆうた・ひなた・晃牙を巡る話。初年度からかなり力を入れて扱われている印象なので、そろそろ結が来るのかなと思っています。22年のMIRAGEでゆうたサイドは大分話を進めた状態ではあるため、年度最後のイベントになるはずの2wink新曲イベントでの解決がありそうです。ズ!!2周年の記念星5でもあるわけですし。
Double Faceの去就
主に斑とこはくの話。こちらも初年度から焦点になっていた話題のひとつです。MaMとしての話はNEW COLORでかなり進んでいるので、あとはこはくと一緒にDFをどうしていくのかを結論づける話が読みたいところです。斑が3周年の記念星5に選ばれたのもあって、今年こそはという願望込みでもあります。
HiMERUと十条要
結には至らない可能性も高そうですが、『神父』やゴッファ関係の話との絡みからも今後も大きく動きそうです。「要が回復したとき『俺』はどうするか」を今後みたいところ。同室の鉄虎やナイトクラブでの絡みが印象的なゆうたが変化しているので、その影響が見られるような展開だとすごく面白そうです。
英智と桃李
次項でリストアップしているSANCTUARYの話とも絡めてくるのかも知れません。トリスタ世代が卒業するということは桃李が生徒会長になる(予定)ということで、ズ!の頃の英智と同じ立場になった上での桃李の考え方が見たいです。生徒会長選挙もなしに会長が決まる夢ノ咲生徒会のシステムは結構気になっているので会長継承で一波乱あっても良いな……と思っています。英智(ある意味では敬人)⇒真緒⇒桃李、の流れで桃李がそのまま会長になるのが英智時代への揺り戻しではなく別の意味があると嬉しいところ。
気になる話題リストアップ
ここでは「結には至らないかもしれないけど今後が楽しみな話題」をリストアップしてみます。
ルックバックシリーズ
22年唐突に始まったルックバックシリーズ。今後も不定期に更新されると予告されつつも全何回なのかなど詳細はほぼ不明です。メタ的には全キャラの幼少期Live2D実装が目的の一つなのかなと推察していますが、幼少期に他キャラとの絡みが一切なさそうなキャラはどうするんだろう……だとか、中学生の姿が実装済みのニキは幼少期実装済み判定なのか? など、なかなか読み切れません。多分、英智/敬人/零/凛月/真緒の中での組み合わせ、みか/宗/紅郎の話、奏汰/斑/颯馬の話あたりはやってくれるのではないかなと期待しています。
追憶セレクションと夏目
23年3月現在ではエレメントしか分かっていませんが、セレクションと言うからにはほかの追憶ストーリーも展開していくつもりなのだと思います。今ここで追憶軸まで時間を巻き戻した展開をしていくのは『区切りの年』に合わせてスタートラインの確認の意味もあるのかなと考えています。原作本編で夏目へのフォーカスが強くなっている部分もあるので、絡めて進められそうな気もしています。
SANCTUARYとSSVRS
オブリガート及び1.5部で「アイドル育成学校」についてかなり掘り下げられたところで、同じくアイドルのための場所として作られたSANCTUARYとSSVRSにもさらなる展開があるのかなという予測です。SSVRSはSS編以降も様々なストーリーで取り上げられているのと、ブラックジャックでの夏目もSSVRSの普及を通じて力を得ようとしていたあたりで、追憶セレクションとの絡みの中でも触れられていきそうです。SANCTUARYの方はSS編以降でまだほぼ触られていませんが、その在り方に対する各キャラの反応を色々と見てみたいです。
流星隊の次の焦点
パワーアップイベントで一足先に区切りを付けた流星隊。今後は全員がリーダーの体制でやっていくことになりましたが、次に焦点になるとしたら翠かなと思っています。the Universeの最後の方で「それぞれの流星隊」の話をしているときに、自分は関係ないといわんばかりの顔をしていた翠が描く流星隊はどんな形になるのか。翠の新曲イベントが俄然楽しみです。
ESの世界進出
SS編で全国の話をしたからには、次はもう世界に行くしかないのでは? と半ば冗談、半ば本気で言っていたら本当にESⅡが建っていたのでした。しかし世界進出を進めていたES上層部は実質的に『神父』の影響下だったというわけで、その『神父』が排除された今どう動いていくのか気になります。
1.5部に関われなかったCrazy:B
夢ノ咲と直接的な関係がないCrazy:Bは1.5部には全く関われませんでした。バンカラグラフィティやオブリガートを夢ノ咲編開始前に公開したのはそのバランス取り的な意味もあったのでしょうが、ギリギリ登場可能だったであろうグランドスラム(実際に夢ノ咲在校生が一人もいないEdenからも登場できている)でも一切登場させなかったのは「登場できない」ことに意味を持たせようとしているのかな、と深読みしています。供給がなかった分、今後が一層楽しみです。
大本のテーマ『ほんものの“アイドル”になる』
物語が結に向かって行くということは、ズ!!のメインテーマである『ほんものの“アイドル”になる』に対する各々の答えが描かれていくことになるのかと思います。一番大枠の答えはMDM編で一彩の問いに対してスバルが答えた「ぜんぶアイドルだよ! ね、簡単でしょ? わかった?」が基本方針なのだと思っているのですが、つまり『ほんものの“アイドル”』に絶対的なひとつの正解がないのだとしたら、アイドルたちはそれぞれ、自分自身が思う『なりたい“アイドル”』像を見つけなければなりません。
夢ノ咲編でも『プロデューサー』の再定義や各アイドルの『“アイドル”とは』が掘り下げられ、続く展開のNEW COLORやtehe Universeで着実に前に進んでいます。
4年目の区切りを迎える2023年。それぞれの出す答えが楽しみです。
【あんスタ】≪1.5部夢ノ咲編まとめ⑥≫1.5部の周辺ストーリー
※この記事は2023年3月12日時点で書いた内容をそのまま転載したものです。その後の実際のストーリー展開等は踏まえられていません。
2022年(度)のひストの中から、「1.5部との関連」という切り口でざっくりとポイントをまとめています。もちろんそれぞれのストーリーはもっと深掘り可能ですが、ここではあくまで1.5部との関連にフォーカスしています。
1.5部のプロローグ
基本的に、どれも時系列的にはSS編よりも後の話ですが、1.5部で取り扱う話題の前提示という意味で「プロローグ」として整理します。
■ゴッファ関係の話:オブリガート
📝 ≪ポイント≫オブリガート
- 夢ノ咲編には大きく関われないコズプロ系列校生中心の学園物語
- ゴッファ周りの大きな掘り下げ(宗教への関心)
- SS編までの流れと「アイドル養成学校」の連結
オブリガートのさらに前振りとしてはロマンチック?デイトがあります。
夢ノ咲編はその舞台の性質上、夢ノ咲の在校生/卒業生ではないキャラクターは大きな関与が難しいですが、その対策の意味もあっての「玲明追憶」だったのではないかと考えています。
十条兄弟の出自と明星父との関わり、カタコンベの存在などから見えるゴッファの宗教/信仰への関心と、「全国・世界各地に乱立するアイドル養成学校」設定の裏付け。特にアイドル養成学校とゴッファ周辺の関連付けについては、SS編で英智が作ったSANCTUARYや、それと対比可能な夏目のSSVRSにも繋がっていく流れなのではないかと思えます。
■コズプロ系列の話:バンカラグラフィティ
📝 ≪ポイント≫バンカラグラフィティ
- 夢ノ咲編には大きく関われないコズプロ系列校生中心の学園物語②
- 作中世界における「女性アイドル」の立ち位置説明
- 「そういう設定の番組」で拾い上げられるものたち
「やっほう! きみが噂の転校生だね☆」(日和、1話)
夢ノ咲編が予告されている段階での、日和のこの開口第一声。
あんさんぶるスターズのはじまりの台詞でありながら、場面設定は玲明の教室で、発言者は巴日和。古いもの/新しいものもテーマのひとつであり、「同じ場所に戻ったようで、同じではない」原点回帰を強烈に感じます。バンカラも時系列的にはSS編よりも後(オブリガートよりも後)ですが、オブリガートとあわせて「1.5部プロローグ」感の強いストーリーです。
玲明を舞台にして展開されますが、ここで描かれる学園物語はあくまで「そういう設定の番組」であって、本物ではありません。「生放送“風”」であって生放送ではなく、「学生“風”」なので卒業生の日和も制服を着るし玲明生ではないこはくにも出番が回ってきます。そんな「本当ではない世界」において、「女性アイドル」がにわかに存在感を増しました。本編(作中「本当の世界」)においては男性アイドルがアイドル業界を席巻していますが、『蛮カラ学園』と『ハイカラ学園』の関係性では逆転していて、『ハイカラ学園』が本編で『蛮カラ学園』がおまけ扱いです。
学校が舞台になる中でそもそも学校に通っていないこはく、これまで描かれることのなかった女性アイドル、陣の青春の話など、数々の“取りこぼし”に目を向けられる話でした。
おまけ)セクシー女教師陣子ちゃんの武勇伝は完全にズ!時代の七不思議のそれ(章臣……)。ここも「夢ノ咲七不思議編」の前振りだなぁと感じる部分です。
■土着信仰まわりの話:ホワイトブリムと色彩百花
📝 ≪ポイント≫ホワイトブリムと色彩百花
- 二本合わせて土着信仰を取り巻く状況を再提示
- ホワイトブリム ⇒ 「地元の有力者」たち側からみた物語と「惰性による伝統」
- 色彩百花 ⇒ 深海一族側視点の復習要素と七不思議に繋がる花畑
土着信仰の話題をアイドル史の流れに合流させる上での前準備ストーリー。色彩百花については夢ノ咲編およびNEW COLORでの斑や光の前振り要素も。
ホワイトブリムは「夢ノ咲地元の有力者はだいたい深海一族の土着信仰と縁がある」設定に踏み込んだストーリーです。貴族の遊戯『潮干狩り』のルールは明らかに深海一族関連の伝承になぞらえられています。英智たちの代ではもはや惰性で続いているにすぎない伝統になってしまっていますが、「一年間で溜まりに溜まった鬱屈を吹き飛ばすための行事」という点は土着信仰の核部分がしっかりと残っています。「僕たちは過去から学ばない」(英智、10話)。地元の搾取の伝承が現代の夢ノ咲やESで繰り広げられていることと重ねられます。
土着信仰の話題は主に奏汰/斑/颯馬を当事者に展開されてきましたが、地元の有力者側である英智/日和/司/桃李のバックボーンにも習慣レベルで息づいているというのがかなり好きな描写です。有力者たちの間に文化としてがっつり影響が残っているからこそ、グランドスラムであれだけ大がかりに古式体育祭が催されるのだなぁと腑に落ちました。グランドスラムで英智と奏汰が巽とお弁当を作ったときに、「海から採れる塩は神聖なもの」という地元の価値観を教えてくれた描写も同じ方向性で好きです。
「都合良く構築された遊びの、ゲームの舞台でも、現実的な問題は決してなかったことにはならないね」(日和、エピローグ②)
これはメタな意味もある台詞だと感じました。「男性アイドル育成ゲーム」として“都合良く構築された”ゲーム、あんさんぶるスターズにおいても、これまでスポットが当たってこなかった女性アイドルなどの問題が「なかったこと」にはならない。
色彩百花は「夢ノ咲に『悪いもの』が発生しているのでは」と騒動になる話。時系列的には骨董市~SS予選間(十月末)がメインの出来事なので、夢ノ咲編の裏側にあたります。あの天満光でさえも負の感情に飲まれている……ように見える流れが圧巻です。ここに限らず『悪いもの』関連の描写は、「確かに負の感情を増幅させる怪異のようなものはあるかもしれない」現実とファンタジーのはざまのようなバランスでとても好き。でもなんでもかんでも『悪いもの』のせいではなくて、光にも負の感情が十分にあるわけで……という話はハイアンドローでも触れられました。
色彩百花で舞台となる花畑は「水が悪いのか歪な花しか咲かない」。これは夢ノ咲編での「水から悪いものが伝わる」につながり、地下の民と海の民の関連性を示すものになっています。
■キャラ個別(嵐):PORTRAIT/時よ止まれ、お前は■■■
📝 ≪ポイント≫PORTRAIT
- セブンブリッジで語られた「昔のアタシ」の実像(12話)
- 時とともに失われたものと、得られたたくさんのもの(エピローグ③)
「ここで私までこの子たちを見放したら、誰がこの子たちの味方になってあげられるっていうんでしょう」(章臣、13話)
公開順ではセブンブリッジ ⇒ PORTRAITの並びになるため、「1.5部のプロローグ」というよりも「セブンブリッジの補強」のイメージです。エピローグで章臣が語る「時とともに失ったものがあると同時に得られたものもたくさんある」という話は、そのままセブンブリッジのテーマに繋がります。
嵐は慰霊碑の『あのひと』のことは「アタシに恋をしてくれた人」という風に言及します。そんな嵐が「恋してる人」は椚章臣。しかし章臣が嵐に向ける愛情は真や泉にも同等程度に向けられる、先輩/兄/ほんの少し大人としてのそれ。この幼少期の先に『あのひと』との出会いがあって、喪失があって……と想うとたまらなくなります。
1.5部のエピローグ
ここでは「夢ノ咲編があったからこそ」の部分を「1.5部のエピローグ」として整理します。
■NEW COLOR/ポルターガイスト
📝 ≪ポイント≫ポルターガイスト
- 黒根姉弟のその後
- Pの「新しい友」NEGI、「旧い友」斑
ブラックジャックエピローグで無事が示唆された黒根姉弟の「その後」が描かれる、まさしく1.5部エピローグ。NEGIが死んだ経緯も明示され、かなりわかりやすくなっています。
NEW COLORでは様々な「ささやかな心の支え」が描かれます。
- セブンブリッジ ⇒ PORTRAIT で描かれてきた、嵐の「アタシを見てくれるひと」
- 子どもたちにとってのNEGIの思い出
- 斑にとってのPや奏汰との思い出
など。端から見るとたいしたことのないように見えることが、当事者にとっては欠いてはいけない心の支えに。
■the Universe/スーパーヴィラン
📝 ≪ポイント≫スーパーヴィラン
- 夢ノ咲編を経た鉄虎中心、流星隊二年生の現在地
ハイアンドロー ⇒ ブラックジャック ⇒ スーパーヴィラン の流れでの、南雲鉄虎の現在地。かなりハラハラさせられる描写の多い前半公開分でしたが、ブラックジャックの鉄虎の様子を見ていたためにそれほど心配をしていませんでした。
ブラックジャックで斑に弟子入りそしそう……な流れがありつつ、実際に悪役の振る舞いをしてみることで「俺が愛せる俺」の姿の輪郭を確かめていきます。鉄虎が今回「俺は本気で努力をしてみたい」(大悪党13話)と声に出したきっかけのひとつは、ハイアンドロー/地球のへそ12話、15~16話の光との会話とひつぎに対する三点リーダーにあるのではないかと考えています。光との会話についてはハイアンドローの項目にて語っていますので、ここではひつぎとの会話を取り上げます。
▼15話 「たとえ死んでも、やりたいことがあるので」(ひつぎ) 「……」(鉄虎)
▼16話 「でも。どうか、できれば殺さないでくださいね(中略)――生きて、やるべきことが、明確になりましたから」(ひつぎ) 「……」(鉄虎)
弱い自分を消してしまいたいとすら思っていた鉄虎に示される、「たとえ死んでもやりたいこと」と「生きてやるべきこと」。自分の身を危険にさらすだけでなく、周囲の信頼を裏切り、巻き込み、それを申し訳なく思いながらも「やりたいこと」を推し進め、「やるべきこと」を見いだしたひつぎ。ここの会話の三点リーダーで実際のところ鉄虎が何を思っていたのかは明言されないのでわかりませんが、努力の方向性の見つけ方に影響があったのではと思えます。
その後、翠たちが助けに来たことで「努力は必ずしも報われないが、報われることもある」と証明された、と鉄虎は受け取ります(ハイアンドロー/エピローグ①)。そしてこれまでの経験を踏まえて「同じ事を繰り返しているだけ」ではない、目的達成のための行動の一端を見せます。その後のブラックジャックでの様子と合わせて、このあたりが転換点になった結果のthe Universeなのかな、と考えながら読んでいました。
【あんスタ】≪1.5部夢ノ咲編まとめ⑤≫各章読解~第4章『ブラックジャック』~
※この記事は2023年3月12日時点で書いた内容をそのまま転載したものです。その後の実際のストーリー展開等は踏まえられていません。
第四章『ブラックジャック』
📝 ≪ポイント≫ブラックジャック
- 1.5部の真相、2部の裏側にいよいよ迫っていくスリル
- 忍が語る「無駄なことなんてない」の意義
- クリスマスに贈られる進んだ先の報い
■章題考察:禁忌への接近と、ひとりではないこと
ルール参考:https://bright777.com/rules_blackjack
カードを使うカジノゲームの代表格。ディーラーvs.プレイヤーの構図が『神父』vs.アイドルたちを彷彿とさせます。黒スートのマヨイや“黒”根にもひっかけているのかなとも深読みしています。
「神に近づきすぎると翼をもがれる」スリル
ブラックジャックは「合計21を目指すが、超えたらアウト」というスリルあるゲームですが、今話では『神父』や『悪いもの』に纏わる禁忌/秘密に近づいていく緊張感が章題に重ねられていたように思います。
作中でひつぎが「禁忌に近づきすぎるような馬鹿はアイドル失格で干される」旨の発言をしつつ夢ノ咲も玲明も、と引き合いに出しますが(奇跡など起きない4話)、ゴッファに近すぎる血縁が故に干された十条要の存在が思い出される発言です。自らの意思で近づいた訳でもないのに生まれからアイドルとして詰んでた状態の要を思うと、なんとも言えない気持ちになりました。一方で、禁忌の方面には近づけていなかったとはいえズ!の頃自分たちで七不思議調査をやっていた葵兄弟はどこまで念頭に置かれた上での描写なのかな……というのは今後の展開上気になっているところです。
手札集め・力を合わせて解決する
ブラックジャックはルール上、最低2枚のカードで勝負します。手札をそろえて勝つという点ではセブンブリッジなどの手役をつくるゲームにも通じますが、ブラックジャックの場合は不要だからと手札を捨てることはできません。たとえ一枚一枚は小さな数字でも、足し合わせることで勝てる可能性が出てくるゲーム。今回はハイアンドローからの流れを受けて、それぞれができることを自ら担ってスタフェス(副題【ブラックジャック】)を成功させるために動く話が展開されました。ひとりぼっちだった忍がはじめた忍者同好会に同じくひとりぼっちだったマヨイが加入してきた流れも合わせて、「ひとりではないこと」も描かれたのだと解釈しています。
1点にも10点にもなれるA
忍と鉄虎の「忍の強さ」についての会話(奇跡など起きない11話)及びその後のマヨイと忍の「無力な生き物」の話(同12話)。状況に応じて1点にも10点にもなれるブラックジャックのAのように(そしてブラックジャックにおける点数の大小が強さとは直結しないように)人それぞれの強い/弱いが場面によって変わることにも擬えられます。
おまけ)黒根ひつぎの名前 設定公表時点で「黒根」⇒「ネクロマンサー」、死んだお姉ちゃんの器 ⇒ 棺、をかけているんだろうなとは思っていましたが、今回明かされる『神父』の意図を踏まえると「くろね」⇒ Clone ⇒ 「クローン」も多分かかってるんだろうなと思います。
■テーマ読解:忍者同好会と「無駄なことなんてない」
今回のストーリーの感想をひと言で言うと「忍くんが優勝」なのですが、単純にそれだけで片付けてしまいたくない良さがあるので整理してみます。
特に印象的だったのが、何でも受け入れる忍です。前半部分、忍はマヨイを探して地下に潜り込みますが、無理矢理外に連れ出そうとはしません。「引きこもっているのにも理由があるはず」と尊重しつつ自分の思いを素直に伝えるのみに留まります。ほかにも颯馬の生き様を「趣味が似てる」、マヨイの生態を「忍者としては見習いたいスキル」程度の認識ですんなりと受け入れています。
忍が何でも受け入れられるのは、自身が「忍者ごっこ」をごっこだと認識しながらも真剣にやってきたことと、それを面白い個性程度に受け入れてくれた流星隊や、忍者同好会に理解を示してくれた真緒の存在が大きいと思います。みかに『時代劇コンビ』などとくくられますが、生まれながらに武家の子として育てられてきた颯馬と違って、忍はあくまで「忍者好き」が出発点です。颯馬の真剣に対して忍の手裏剣はゴム製で、フィクションの忍者と歴史上の忍者の違いも理解した上で自分なりの忍者観を構築して振る舞っています。自身が狭い意味での「本物の忍者」でないことを承知の上でロールプレイを大真面目にやる忍は、本物でなくても受け入れてもらえたのが嬉しかったのと同じように、にわかには信じがたい背景を持つ奏汰や颯馬やマヨイも受け入れられます。自分と違うから/自分が知らないからといって存在を否定することもしません、否定されない嬉しさを知っているから。単なる空想でも現実になることを知っているから。
この忍の絶妙なバランス感覚はMIRAGEでの対ゆうたの態度にも表れていると思います。忍に改めて受けいれてもらえ、自身も憧れたアイドルになれたマヨイが「忍者同好会の私たちがみんなの夢を否定するわけにはいかない」と肯定していく様もとっても嬉しい描写でした(エピローグ②)。
忍者ごっこは端から見れば『無駄なこと』として一蹴されてしまうようなものです。それでも忍者を愛し救われている忍だからこそ、「無駄なことなんて何ひとつないでござるよ」(奇跡など起きない12話)が重みを増して響きます。ハイアンドローを経た鉄虎にもすんなりと受け止められ、ストーリーを通して直接的な役割はほとんど果たせなかったにも関わらず、自分を卑下せずに着実に前に進んでいくのです。
『無駄なこと』のテーマは今回、忍と兄弟ごっこをする颯馬にも重ねられました。颯馬の武士としての側面(と刀)は元々現代アイドル業界においては『無用の長物』扱いされがちな存在ですが、ズ!の頃には家の役目という存在意義が与えられていました。しかし、深海関係の宗教団体が解体されたズ!!においてはもはや役目は意味をなさず、颯馬自身も奏汰を神に戻したくないと願う以上は自ら別の拠り所を見つけなければなりません。そんな颯馬が今回掲げた武家の存在意義は「牙なき民を守る」でした。サブマリンも経て武士としての能力をアイドル界の戦争にも活かし始めた颯馬はいよいよ「家の役目」によらない「自分の役目」を掴んで無用の長物から脱していきます。
後半、颯馬が提案する肉壁作戦も見事なものです。危険は承知ながらも無駄死にする気はさらさら無く、自分自身が『神父』や敬人にとって十二分に価値がある存在だと分かった上で、どちらに転んでも自分たちの勝利に繋がると確信した上での行動でした。
存在意義という観点では、弓弦とみかのシーンも同じ切り口で読めます。それぞれ桃李/宗から離れて「自分らしさ」を探す二人。弓弦は全体への奉仕が巡り巡って桃李の幸せになるのだと役目を見いだし、一方でみかは周囲の助けも借りながら嵐のために行動します。死ぬために生まれてきたNEGIがPに報いるために行動し、「生まれてきて良かった」と笑えるのも同じテーマに貫かれているのかなと思います。
■テーマ読解:進んできた先の報い
夢ノ咲編の結にあたる今ストーリーでは様々な形での「報い」が描かれました。夢を叶えた忍やマヨイ、これまでの道のりを無駄ではなかったと思える鉄虎、役割を見いだして嬉しい颯馬や弓弦、七夕で涙を飲み込んだ嵐に対するみかの報い、Pに報いたいアイドルたちや黒根姉弟、生まれてきて良かったと言えるNEGI、拾い集めてきた人たちからたくさんの「ありがとう」を受け取って肩の力が抜ける夏目。
ひつぎが悪夢ノ咲の説明の中で語ったように「周りが何もかも未知であること」への原始的恐怖があるのだとすれば、未来に進むことは怖いことです。進んだ先の未来は未知そのものなのですから。それでも恐怖で目をそらさず、それぞれの道でより良い未来を目指して進んだからこそ得られた報いがあります。
ブラックジャックはエピソードリンク(以下、エピリン)の形と被るところがあると感じます。特に夏目は追憶~エピリンの英智を彷彿とさせるような言動が何カ所かありました。追憶的な部分は「ありがとう、子猫ちゃん。僕の思い通りに踊ってくれて」(サンタさんは来ない4話。マリオネットでの英智⇒宗(なずなの伝聞))など。そしてエピリン的な部分は後半、追憶からの一連の流れを語った上で「我らの前途が闇に包まれることはないだろう」と魔法をかける場面(奇跡など起きない10話)です(これは大分余談ですが、奇跡など起きない8話での「ボクはこの世界を変える権利を得る」もエピリン英智の「(敬人に)せめて世界を変える権利を……」と被って大好きです)。
エピリンではズ!!という不確かな未来に進むタイミングで、英智が次のような台詞を言います。
「ここですべてを終わらせて、綺麗な思い出にしてしまったほうが良かったと、きっと後悔するだろう」 「それでも、君が僕の、『fine』の未来を望むなら」 「僕は応えて、叶えよう。それが、アイドルだ」 「僕たちの愛する、アイドルだ」(エピリン:エピローグ③)
場面としては桃李に対しての言葉ですが、こちらに視線を向けているスチルと合わせて私たちプレイヤー側にも語りかけているように感じられます。実際、エピリン公開当時はまだ新章(ズ!!)の情報はほとんど分かっていなくてかなり不安だったのですが、それを見透かしたようにして進む覚悟を見せてくれる彼らの(そしてこれを出してきた運営と日日日先生が描く)未来を見てみたいと俄然楽しみになったものでした。
奇跡など起きない10話の夏目の台詞も、この英智の台詞と同じような役割を感じます。2023年3月現在、流星隊のパワーアップや夢ノ咲3年生の卒業イベント予告などで「さらに先へ進む」未来が現実的になってきました。未知の未来への恐怖はあれど、みんなでハッピーエンドを目指そうとする逆先夏目の魔法を頼りに、この先の展開を楽しみにしています。
【あんスタ】≪1.5部夢ノ咲編まとめ④≫各章読解~第3章『ハイアンドロー』~
※この記事は2023年3月12日時点で書いた内容をそのまま転載したものです。その後の実際のストーリー展開等は踏まえられていません。
第三章『ハイアンドロー』
📝 ≪ポイント≫ハイアンドロー
- 「二者択一」と未来に向かって進むこと
- 修学旅行と重ねて描かれる鉄虎/翠の壁
- 進んだ先の行き止まりをいかに乗り越えるか
■章題考察:「二者択一」と「あけてみないとわからない」
ルール参考:https://fresear.com/trump/high-low
①様々な二者択一
『ハイアンドロー』は自分のカードが相手のカードよりも上か/下かを当てるシンプルなゲームです。
今回のストーリー中では様々な二者択一や対比が描かれました。
- 先発組の豪華な修学旅行 : 第二次後発組の無茶なバス旅
- お仕事優先の風潮を「仕方がない」と飲み込んだ創:早く合流したいと主張して実現した光
- (様々な面で)翠:鉄虎、翠:創、鉄虎:光、創:司、創:ゆうたなど各キャラクター
- 千秋か:鉄虎か(世界の果て11話)
- 進むか:留まるか
- アイドルにあらずんば人にあらずという雰囲気さえあるESⅡ周辺
- NEGI曰くの「みんな単一民族だって思ってる」
など。ほかにも細々とありました。二者択一に対する答えについては次項のテーマ読解でまとめますが、ハイ “アンド” ローなのがまた意味が重なって美味しいです。
②あけてみないとわからない
実際自分が正解だったのか否かは、ゲームを進めてカードをオープンしないとわかりません。今回のストーリーは夢ノ咲二年生を中心に、それぞれの「印象と実際のギャップ」も多数描かれました。
- 翠:見た目で期待されるが、自分はそんなにたいしたものではないという話
- 桃李:「見た目よりも真面目」の評
- ゆうた:皆の前で猫をかぶっていたのがはがれてきた
- 光:天真爛漫なスーパースターのようで挫折も悔しさも知っている
- ひつぎ:お馬鹿キャラのようで今回の黒幕
など。最後には翠が「旅は出発しないとわからない」とまとめてくれました。修学旅行の『学びを得る旅』という要素とうまく絡めた章題だなと思います。
■テーマ読解:二者択一ではなく、「より良い未来」をそれぞれの道で目指す
今回のストーリーでは大きな壁が描かれました。物理的な壁としては絶対に合流不可能な設計の『ハイアンドロー』企画。それに重ねて描かれたのが、どん詰まりに陥っている流星隊(主に鉄虎と翠)。これらの壁をいかに乗り越えてよりよい未来にたどり着くか? が今回の焦点であり、様々な姿勢の対比がなされ、最終的に示された答えは「ひとつの正解の道はなく、それぞれの道でよりよい未来を目指す」でした。
大きな壁を前にした時の反応は、大別すると「それでも壁を破ろうと体当たりし続ける」(光など)「今いるここで出来ることを考える」(翠など)の二つがあります。流星隊の状況を踏まえると鉄虎は前者のイメージですが、印象的なのが地下牢のような場所からの脱出について話し合う場面(地球のへそ12話)です。とにかく試してみなきゃ分からないと突き進もうとする光に対し、鉄虎が「どうにもならないことがある」と諦めることを提案するところです。ここに至るまでに裏では翠が「血塗れになるのを見たくない」と鉄虎への思いを語ったり、後発組内でもひなたや友也が鉄虎の愚痴をそのままに受け入れたりするシーンが描かれてきました。諦めよう、という冷静風な鉄虎の言動は一見翠が望んだ姿のようでもありますが、そもそも翠も「行き止まりで立ち尽くしたまま壊れていく」「努力している人が勝って当然」「俺もできれば変わりたかった(変わる努力をしてこなかった)」という認識を創にこぼしており、空元気のようなつっぱりも投げ捨てて立ち止まる鉄虎の姿は翠が真に願っている在り方ではないのだと感じます。
鉄虎の発言を受けても光は諦めません。そんな光に対して鉄虎は「挫折したことないのか、常に前向きで羨ましい」と暗に挫折している自分との違いを線引きしますが、対する光のこのあとの台詞が全部好きです。光にだって挫折はあります。Rabitsや自分の可能性を誰よりも信じている光だからこそ、ズ!メインスト紅月戦で見てもらえなかったことや、そのほかにもいくつもあるRabitsが思い通りに出来なかったことを誰よりも悔しく思っています。時系列的に色彩百花関連で三毛縞妹とも出会っていて、本当に自分ではどうにもできないことも知っています。鉄虎がしようとした挫折による線引きは意味をなしませんが、それでも光は諦めません。ここで光の体当たりを止めようとする友也には鉄虎に対する翠の姿が重なってきます。
「誰にも正解なんかわかんないし! 監督だからって、偉いからって何でも知ってるわけじゃないし! みんなで意見を出し合って、より良いかたちを探すんだぜ!」(光、地球のへそ12話)
この応答が、今回のストーリー全体の答えの一つなのかなと思っています。この台詞のあとには「黙って言うことを聞く良い子が褒められるのは義務教育まで」と『都合の良い子』創側の批判になりそうな言葉が続きますが、それも合流後の舞台で解消されます。創は第二次後発組を心配はすれど実際に救うための手段は見つけられず、代わりに今できることをやろうとオーストラリアでの仕事を真摯にこなしてきました。そのおかげで、オーストラリアのことを学ぶ機会がなかった光も最後のステージを万全にこなすことができるのです。「お互い見せっこしましょう、お互いが見てきたものを」(創、エピローグ①)。合流を実現出来た司も、司なりに出来ることとして最適解の弓弦を頼ったのでした。
ハイかローかの二者択一ではなく、かといって全部抱える総取りでもなく。それぞれが自分の出来ることを精一杯やってより良い未来にたどり着く。光の言葉に覚悟を決め、光のようになりたいと笑顔で言えるようになった鉄虎は、さらにひつぎの「やりたいこと/やるべきこと」の話を聞いた上で、怪獣(仮)に立ち向かう理由について「ヒーローだから?」「ううん、俺だけが戦い方を知っているからッス!」(地球のへそ18話)と自分の出来ることをベースに自分を愛してくれる皆のためにやるべきことを宣言します。
合流した翠は当然「根性論」と否定はしますが、エピローグのステージ上で鉄虎の諦めない姿勢から影響を受けていることを認めます。鉄虎の方も失敗から学んでいることを示します。どちらか一方が正解ではなくそれぞれが出来ることを持ち寄って進んでいく在り方は、流星隊のモットーとも重なってユニバースに繋がっていきます。ユニバースとの関連は周辺ストーリーの項目でもまとめています。
■テーマ読解:真実を知ったその先と『アイドル』として出来ること
ハイアンドローでは黒根姉弟のバックグラウンドやひつぎの目的についてもかなりの情報が開示されます。「真実の姿が見えてくる」という描写は黒根姉弟以外にも実は真面目な桃李や猫をかぶっていたゆうたなども重なりますが、エピローグではさらに「本物のコアラは意外とそんなに」とぶっちゃける翠が描かれます。本物のコアラはイメージよりもゆるくない上に引っかかれたりしても、それでも痛みすら嬉しいと受け入れる翠。話は少しそれますが「気が合うッスね」と鉄虎が返すのも好きです。
ひつぎの真実を知った友也も、ひつぎが自分たちを思って遠ざけようとしているのを承知の上で「嫌ってやらない。俺たちに出来ることは何だろう」と考えます。セブンブリッジで存在が明かされ ⇒ グランドスラムでいよいよ踏み込み ⇒ ハイアンドローで真実の壁にぶつかる流れです。
しんどさを知ったからにはもっと何かをしてあげたいという態度は、鉄虎の愚痴を聞くひなたや、オーストラリアの大地の愚痴(仮)を聞いた光にも見られるものです。光はそんな態度について「アイドルなら、みんなオレと同じように思うんじゃない?」との反応ですが、実際に友也が同じように考えているのを見ると感慨深いものがあります。
先行きは不透明ながらなも、「意外と何とかなるのかも」と明るい姿勢でブラックジャックに繋がっていきます。
おまけ)宙が道中で提案する「狂牛病のアナログゲーム」がどれかを知りたいです。ざっと探して↓のようなゲームを見つけているのですがわかりません……。情報募集中です。
【あんスタ】≪1.5部夢ノ咲編まとめ③≫各章読解~第2章『グランドスラム』~
※この記事は2023年3月12日時点で書いた内容をそのまま転載したものです。その後の実際のストーリー展開等は踏まえられていません。
第二章『グランドスラム』
📝 ≪ポイント≫グランドスラム
- 配られた手札で勝つための各々の「勝利条件」
- 普通と落ちこぼれ、「認識」の功罪と先へ踏み込むこと
- いよいよ繋がる土着信仰/七不思議と『アイドル』
■章題考察:配られた手札で勝つための勝利条件
ルール参考:https://www.jcbl.or.jp/Portals/0/pdf/fukyu/tools/play-bridge.pdf
グランドスラム=『コントラクトブリッジ(以下、ブリッジ)』における(超簡潔にまとめると)「完全勝利」のこと。ブリッジとの関連性で考えていきます。
①2者協力プレイ
ブリッジは2対2に分かれて4人で行うゲーム。古式体育祭も「四大事務所対抗戦」でスタートしながら中盤以降はリズリン・コズプロ連合が発生。形式としては三つ巴になるのであくまでペア戦のブリッジとはずれてきてしまいますが、ブリッジもオークションが終わってカードを出し合う段階になると一人はダミーとなってゲームに直接的には関われなくなるので、その部分を「連合によって大将から下ろされるゆうた(表向きはひなた)」でなぞらえているのかも?(4組で競っていた初日段階がオークションなのだとすると、リズリンがディクレアラーというのはあまりしっくりきませんが……今話の中心人物という意味では友也がディクレアラーと言えるのかも?)
②各々の勝利条件
ブリッジの特徴として、オークションによって「自分たちは『何を切り札にして、何トリック取って勝つ』か」を取り決め(コントラクト)していくという点があげられます。作中では『古式体育祭』を舞台にそれぞれの思惑が交差して、単純な競技の勝ち負けの問題ではなくなっていきます。以下はその例です。
- スタプロ組(藍良、真):競技の勝敗よりも楽しんだもの勝ち。アイドルとして価値のある勝利。
- コズプロ組(主に茨):勝てば良かろう。夢ノ咲×ESの中で存在感を示す。
- Switch:体育祭を楽しい催しとして終えることで「誰も取りこぼさず皆幸せ」を実現しつつ、上層部にも影響力を持つきっかけとする(Switchはさらに三者三様の思惑も)。
- ひつぎ:禁忌を探り、真実に迫ろうとしている(NEGIはまた別で動いている)。
特に、わかりやすく「楽しんだもの勝ち」を宣言したスタプロ組にコントラクト要素を感じます。加えて、作中の最終競技『グランドスラム』も、「誰がどれくらいの距離を走るか」など詳細なルールは競技者に委ねられているあたりがコントラクトのオークションっぽいです。
四大事務所対抗戦の形式は明らかに不平等です。配られた手札の強さはもちろん、枚数すら違います。これは個人単位でもあてはまることで、今回のメインである宙、友也、藍良はそれぞれ『特別』『普通』『劣等生』の側面が色濃く描かれますし、暗躍しようとする夏目も今はまだES上層部と渡り合うための手札を集めている段階という印象です。しかし、勝利の形をコントラクトによって決めるブリッジであれば、立ち回り次第で弱い手札でも勝利できます。配られた手札が平等ではない中で、その手札を使ってどんな勝利を目指していくのか。各々の思惑が入り乱れる様は読みごたえがありました。
■テーマ読解:「認識」の功罪とその先へ踏み込むこと
グランドスラムのイベントタイトルは『激闘夢ノ咲/存在示す体育祭!』。今回のテーマの一つは「認識」だと思います。セブンブリッジでこれまで見えてこなかった存在や問題が認識されるようになった、その次にあぶり出されるものは何か。各所に現れた「認識」の話題を整理してみます。
まずは冒頭部分(学校の怪談2話)。『血を吐くケダモノ』の話題に対して、藍良は「身近な話だからこそ、自分の身に降りかかりそうで怖い」と反応します。どこか遠い世界のことではなく、「自分の世界」にもあり得そうだと認識してしまうから怖い。これまで見えなかったからこそ問題とされてこなかった女性アイドルや地下アイドルたちも、この世界にいるのだと認識されたことで、ES上層部が脅威を感じて積極的に排除しようとしてきます(NEGI、血を吐く獣9話)。ES上層部が『古式体育祭』の儀式にすがろうとしたように(そしてそれをSwitchが利用しようとしたように)、脅威や怪異が実在するか否かは重要ではなく、未知の領域を認識し「そこに隠された何か」に恐怖を抱いてしまったことそのものが問題なのです(青の鎮魂歌9話、エピローグ①)。
しかし、未知のその先へ「認識」を進めることによって、恐怖は形を変えていきます。NEGIら地下アイドルの置かれている状況に対して怒りを抱いてくれる人たちの存在などがその証です。ひつぎは七不思議の先の真実を、戦う武器にしようとしています。
この「認識」とその先の話は友也と藍良の掘り下げの中でも描かれました。わかりやすいのは友也です(エピローグ④)。
友也は「普通」の人生を歩んできた自覚があって、ズ!メインスト1部の紅月戦の舞台までは、成功も知らない代わりに挫折も知りませんでした。紅月戦で友也が認識したのは「無視されることのキツさ」です。まるで存在しないかのように、世界から認識されない痛み。しかしそこで友也は立ち止まらずに、同じ痛みを誰にも味わわせたくないと心に刻み、普通が故に認識しやすい皆の個性を素晴らしいものだと世界に掲げていくのです。エピローグ④の友也の語りが一文字一句全部好きです。友也にとっては皆より遅れがちな創や藍良も、逆にどこまでも突き抜けていってしまいそうな光や渉も、そのほかのアイドルみんな全部まとめて世界に掲げたい「すごいやつら」で、しかもそこでも足踏みせずに「自分も“それ”になりたい」と踏み込んでいく。サンクチュアリあたりと一緒に読むと一層かみしめたくなるシーンです。
対する藍良は「すごいやつら」と自分の間に線引きをしてしまいがちなタイプです。「普通(ニュートラル)」ではなく「劣等生(マイナス)」スタートなのが友也との違いで、周囲のすごさと自分の無力さを認識すればするほど「すごいやつら」との間の壁を高く分厚いものにしてしまっていました。そんな藍良は陸の部第一競技『ライフイズビューティフル』でも「アイドルとしては失格」と思いながら落伍者の人生を「身の丈に合った選択」として選びますが、友也の話を聞いた後の最終競技『グランドスラム』では、やはり「ちょっぴりだけ走る」と身の丈に合わせた選択をしながらも、その選択の理由はチームメイトの「嫌な部分/すごい部分」を認識した上で、さらに踏み込んで勝利を本気で狙うための戦略的なものでした。あくまで身の丈にあった距離を走るあたりにはALKALOIDっぽさも感じます。
あんさんぶるスターズにおける凡人たちについてはもっと色々と整理したいことが多いので、また別の場所で書けたら……と思います。
「認識されない」=「無視される」の話題については、宙がゆうたへの『悪いもの』の影響について心配するあたり(青の鎮魂歌8話)にもかかっていそうです。ゆうたの怒りは『悪いもの』に増幅されて……というものではなく彼自身のものとして描かれているという認識ですが、このあたりのバランスは色彩百花の光とも通じる絶妙さを感じます。サンドストームの前日譚としても踏まえておきたい部分です。
■テーマ読解:いよいよ繋がる土着信仰と『アイドル』
セブンブリッジから続く土着信仰の話題とアイドルの接続も、グランドスラムで起承転結の承を迎えます。古式体育祭の開催によって、示唆されるだけだった海の民関連の話題とES上層部の関連が明確になっただけでなく、『地球の鎮魂歌』の話題とあわせて現代を生きるアイドル達とも直接的に繋がりました。「諸説ある」としながらも地下の民(礼瀬)と海の民(深海)の関連付けにはっきり言及するのもここ。
『悪いもの』を鎮めるための儀式が実はアイドル的なものである、ということ自体は、篝火の、颯馬が奏汰の歌を聴いたシーンなどで示されてきたことです。ズ!!になってからもサブマリンなどで同じ話題は繰り返されてきましたが、そもそも土着信仰系の話題に関わっていたメンバーが少なかったのもあって、その認識の範囲は限定的でした。しかし、今回はひつぎが多数を巻き込んだために関係者が増え、禁忌は拡散、認識されていきます。
ひつぎは巻き込んでしまったことに対して「ボクがボクだけでやるべきこと」(青の鎮魂歌9話)だったと反省を示していますが、それを聞いた宙はその場では三点リーダーでとどめつつも、手を回してサブリミナル的に情報を拡散する手法をとり、さらにそれを友也に話します。ここで友也に話す理由が、先述の「すごいものを世界中に見せびらかしたい」という友也のアイドルとしての動機が宙の憧れの魔法使い像とも繋がるところも好きです。この、「ボクだけでやるべき」への対処は、夏目が「ソラを『悪い魔法使い』にはできない」として真意全ては語らなかったことへの応答にもなっていると思います。頼まれなくても、むしろ遠ざけられたとしても、ひつぎ自身が宙に言ったように、知るべきかそうでないかも「誰かに決められることじゃなくないですか?」(青の鎮魂歌7話)なので、宙は宙自身の意思でもって踏み込んでいくのです。
最終競技の実況に呼ばれたのは敬人と零。それぞれの思惑を覗かせまくっていたこれまでの実況組とは打って変わって、リズリン組の二人は「余計な茶々は無視して笑い飛ばして進んでいけ」「おぬしらが望むままに生きるがよい」と在校生を見守ります。クロスロードなどを歩んできた二人だからこその姿勢が嬉しいですし、本当に綺麗にまとめてくれたなと感じました。
【あんスタ】≪1.5部夢ノ咲編まとめ②≫各章読解~第1章『セブンブリッジ』~
※この記事は2023年3月12日時点で書いた内容をそのまま転載したものです。その後の実際のストーリー展開等は踏まえられていません。
全体を通して貫くモチーフ:トランプ
1.5部各章の章題はトランプゲームに関わる単語になっています。『グランドスラム』以外の3つはそのままゲーム名で、『グランドスラム』はゲーム『コントラクトブリッジ』における完全勝利を指します。各元ネタゲームとスト内容の関連性については、各章セクションの「章題考察」にてまとめています。
7周年(七不思議)⇒ ラッキーセブン ⇒ カジノ ⇒ トランプ の連想によるところが大きいと思われますが、最終的に礼瀬マヨイの掘り下げに繋がること、黒根ひつぎが53番目(54番目)の登場キャラクター(※)になってトランプのジョーカー相当の立ち位置になぞらえられることも関連しているのかもしれません。
※氷鷹誠矢をいれると54番目になるはずですが、23年2月現在、何故か公式サイトの”OTHER CHARACTERS”には誠矢がいないので公式サイト上のカウントだと53番目になります、数え間違いでなければ……。どちらにせよジョーカー2枚(計54枚)とすれば数は合うのでまあいいか程度に深読みしています。でもジョーカー2枚で言うならひつぎとNEGIでカウントする方が綺麗ではある。十条要については扱いが複雑なのでカウントに入れていません。NEGIをカウントに入れるなら入れるべきでは?(終わらない計算)ちなみにゲパが初登場したときはそこで「(誠矢を数えて)53番目だ!ジョーカーだ!」と数えていました。ゲパがジョーカーの方が喩え的にはしっくりくるなと思っています。
第一章『セブンブリッジ』
📝 ≪ポイント≫セブンブリッジ - 7周年、トランプゲーム、七夕、橋渡しと要素盛りだくさんの章題 - ひつぎを通した『プロデューサー』の再定義と、プロデューサーのスタート地点七夕祭からの再出発 - 『原点回帰』と絡めて美味しい「変わったもの/変えたいもの/変えたくないもの」
■章題考察:取捨選択と橋渡し
ルール参考:https://www.nintendo.co.jp/others/playing_cards/howtoplay/seven_bridge/index.html
トランプゲームの意味だけでなく、七夕とも重ねられたかなり盛りだくさんの章題です。
①メタ要素:7周年に展開される七夕祭舞台の七不思議の話のはじまり
おそらくスタートラインはこの要素。前述の連想でトランプまでたどり着いて、7に関連するトランプゲームの連想でセブンブリッジ、7並べやセブンアップあたりが候補になったのかなと推察しています。そこに七夕要素を加えるとセブンブリッジがかなりしっくりきます。もくしくはテーマ読解で詳述の通り、七夕祭は『原点回帰』の意味でも納得の舞台設定なので七夕祭ありきの連想の可能性もあり。
②ゲーム:セブンブリッジにおける『取捨選択』
セブンブリッジは手札を取捨選択しながら役を作っていくゲームですが、スト内では凛月がKnightsの戦略について言及する場面(ヘイトコントロール7話)で決断によって得たもの/失ったものがあることを示されます。そのほか、撤去されてしまう慰霊碑や嵐の心情などでも時の流れの中で「捨てられてしまうもの」について語られます。
③七夕:鵲のかける橋と男女の/分断された者たちの逢瀬
「七夕」で連想されるモチーフ、男女の分断と鵲のかける橋。ストーリー内では嵐やNEGI、Pを中心に、これまでほとんど触れられてこなかった女性アイドルたちが同じ舞台に上がってくる展開が描かれました。そのほかにも、この章では数多くの分断が描かれ、それらが舞台の上で交わっていきます。
■テーマ読解:数々の分断とプロデューサーの再定義
「分断夢ノ咲」のイベントタイトルに違わず、今イベントでは数々の分断とその融合が描かれました。
- 男女アイドルの分断
- 嵐と『あの人』、生者と死者の分断(とそれを超えた存在のNEGI、超えんとする『神父』)
- UNDEAD中心に卒業生と在校生の分断
- アイドル科とプロデュース科の分断
- 平和党とそれ以外の分断
- Knights中心にESと夢ノ咲の分断
- 各ジャンルの分断
七夕は分断された恋人の逢瀬がロマンチックな伝説ですが、あんスタにおける七夕祭も、初年度時点で「わだかまりがあるRa*bitsと紅月が同じ舞台で和解する」という側面がありました。
七夕祭はそれだけでなく、スト内でも言及される通り「転校生の最初のプロデュース企画」の側面も持ち合わせています。ズ!メインスト第一部におけるプロデューサーはあくまで「トリスタの一員」だという印象を受けますが、学校全体が関わる七夕祭を手がけることで、「みんなのプロデューサー」への一歩を踏み出しました。
プロデューサーの原点として印象的な七夕祭を題材にして、今回のスト内ではプロデュース科に入りたてのひつぎとの交流を通じて『プロデューサーの役割』が再定義されていきます。
「二年生のプロデュース科転入生(全くの素人)」というズ!の頃の転校生と同じ属性を持つひつぎは、かつての転校生と同じく「プロデューサーって何?」レベルからのスタート。そんなひつぎが出した『プロデューサーっぽさ』の答えは「ボクたちは舞台と、それを繋ぐ橋を用意しただけ」(エピローグ①)。アイドルとファン、アイドルと企画、アイドル同士、ほかにも色んなものの間を繋ぐことがプロデューサーの役割だと示されたのです。
■テーマ読解:取捨選択と変わるもの/変わらないもの
ストーリー中では「夢ノ咲の慰霊碑が取り壊される」という事件が大きな波紋をよんでいきます。この不可逆的な変化はズ!⇒ズ!!へと大きく変わったあんスタそのものに重なり、嵐の反発は一読者として自分を重ねてしまう部分がありました。
ズ!!へ進んだ上で回帰してきた夢ノ咲は、旧三年生は当然いなくて代わりに新入生が沢山いたり、真緒が生徒会長だったり、アイドル科とプロデュース科はもう別教室だったり、と同じようで同じではありません。みかがPに対してハリネズミ的ではない春の情景にも時の流れを感じるものです。それらの変化の中には、みかとPが仲良くなっていることや部長として頑張るアドニスなど、「時が進んで良かった」と嬉しくなるものももちろん山ほどあります。一方で『平和党』/ESとの諍いや燻っている晃牙を見ると、「こんなことなら時間なんて進まなければ良かった」と思ってしまうことも、いくつもあります。
それでも進んだ時は戻しようがなく、どんなに全部抱えて歩こうとしたって、前に進むと言うことは「選ばなかった方の道」や「進む前の自分」とは別のものになっていくということです。何を取り、何を捨てるか。セブンブリッジの手番よろしく選択を迫られるアイドルたち。その「捨てられるもの」のなかには夢ノ咲の慰霊碑のように、多くの人にとっては触れ難い、できれば「なかったこと」にしてしまいたいものもありますが、鳴上嵐にとっては取り壊しを知って取り乱してしまうほどに大事なものです。たとえそこにかけられる想い(『あのひと』を忘れない自分でいるためのよすが、エピローグ④)が慰霊碑制作者が込めた想い(ゴッファが愛したアイドル(明星父?)の墓?、エピローグ③)とはかけ離れたものであっても、なかったことにできるはずもありません。
嵐が取り乱した原因も、「『あのひと』を忘れてしまう自分」に変化してしまうことへの恐怖でした。根っこにある「愛されたい(アタシを見てほしい)」を、愛してくれた『あのひと』の思い出で満たしてきたのに、突然の慰霊碑撤去で安定は崩壊して変化を迫られます。この崩壊は二つの解決につながります。
①『常に愛される自分』で在る
「愛し愛されるために生まれてきた」のだから、それを全うできるように振る舞おう、という解決。舞台の上で曇り顔は似合わない。
②ひとりでは捨ててしまうものも、みんなで拾う
しかし、上記の解決では結局のところ悲しみを飲み込むだけで、『あのひと』が忘れられてしまう可能性には変わりがありません。取捨選択で捨てられてしまいそうになったのを拾い上げたのが、ひつぎの「『あのひと』の曲をみんなに覚えてもらう」作戦でした。ひとりでは抱えきれずに取りこぼしていたものを拾い上げて、誰かに繋ぐ。再定義された『プロデューサー』の役割に近い振る舞いです。
慰霊碑以外にも、ESと夢ノ咲のはざまでKnightsの取捨選択も非常に印象的に描かれていました。特に凛月が何もしないという選択/『何もしなかったという罪』に言及し、それを背負うと言った(ヘイトコントロール7話)のは、アフタヌーン等ズ!のストでの凛月の後悔が思い起こされ、説得力と凛月自身の前進による変化を感じました。場面設定がガーデンテラスだったのも、アフタヌーンに執着し続けている一読者としての深読みポイントです。
嵐に寄り添うみかも、今回の『取捨選択』というテーマにおいては色々と考えたくなる存在です。みかの大きな柱である「何も捨てられない」。変化という観点でも、「周りがどう変化しようとも、自分の道をひた走るのがおれたち『Valkyrie』」(ラブアンドピース?5話)と、今回のテーマに対しての立ち位置がかなりはっきりしています。ズ!の頃はみかの揺れ動きに嵐が寄り添う場面が多かった印象ですが(スタフェスなど)、セブンブリッジに関してはむしろみかの方が安定し、ナビゲーター的なポジションも担っています。みかがこれまで嵐から受けてきた愛を愛で返していく流れがブラックジャックまで繋がっていくところも、みかの変化を感じられて好きです。
変わることへの反発、そして変化の中でこれまでに取りこぼされてきた様々なもの(SS編までの裏側での夢ノ咲やP、シリーズ全体を通しての女性アイドル、その他諸々)を拾い上げ、つなげていく物語であり、その役割を担う存在としての『プロデューサー』が示されたのかなと考えています。
おまけ)エピローグ⑤でひつぎが『神父』と電話する場面は『神父』の言動が垣間見えるシーンですが、Pを心配するひつぎに対して「抱えこむのはひつぎも同じ」と言ったり、荒削りなはずの『あのひと』の歌について「良い曲だね」と評価してみたり、SSでの日和擬態時言動とはまた違った雰囲気を感じて情緒がめちゃくちゃになります。今回はひつぎの聞き返し状態なので、直接的な描写なのはSS時のほうですが。
