【あんスタ】≪1.5部夢ノ咲編まとめ⑥≫1.5部の周辺ストーリー

※この記事は2023年3月12日時点で書いた内容をそのまま転載したものです。その後の実際のストーリー展開等は踏まえられていません。

 2022年(度)のひストの中から、「1.5部との関連」という切り口でざっくりとポイントをまとめています。もちろんそれぞれのストーリーはもっと深掘り可能ですが、ここではあくまで1.5部との関連にフォーカスしています。

1.5部のプロローグ

 基本的に、どれも時系列的にはSS編よりも後の話ですが、1.5部で取り扱う話題の前提示という意味で「プロローグ」として整理します。

■ゴッファ関係の話:オブリガート

📝 ≪ポイント≫オブリガート

  • 夢ノ咲編には大きく関われないコズプロ系列校生中心の学園物語
  • ゴッファ周りの大きな掘り下げ(宗教への関心)
  • SS編までの流れと「アイドル養成学校」の連結

 オブリガートのさらに前振りとしてはロマンチック?デイトがあります。

 夢ノ咲編はその舞台の性質上、夢ノ咲の在校生/卒業生ではないキャラクターは大きな関与が難しいですが、その対策の意味もあっての「玲明追憶」だったのではないかと考えています。

 十条兄弟の出自と明星父との関わり、カタコンベの存在などから見えるゴッファの宗教/信仰への関心と、「全国・世界各地に乱立するアイドル養成学校」設定の裏付け。特にアイドル養成学校とゴッファ周辺の関連付けについては、SS編で英智が作ったSANCTUARYや、それと対比可能な夏目のSSVRSにも繋がっていく流れなのではないかと思えます。

■コズプロ系列の話:バンカラグラフィティ

📝 ≪ポイント≫バンカラグラフィティ

  • 夢ノ咲編には大きく関われないコズプロ系列校生中心の学園物語②
  • 作中世界における「女性アイドル」の立ち位置説明
  • 「そういう設定の番組」で拾い上げられるものたち

「やっほう! きみが噂の転校生だね☆」(日和、1話)

 夢ノ咲編が予告されている段階での、日和のこの開口第一声。

 あんさんぶるスターズのはじまりの台詞でありながら、場面設定は玲明の教室で、発言者は巴日和。古いもの/新しいものもテーマのひとつであり、「同じ場所に戻ったようで、同じではない」原点回帰を強烈に感じます。バンカラも時系列的にはSS編よりも後(オブリガートよりも後)ですが、オブリガートとあわせて「1.5部プロローグ」感の強いストーリーです。

 玲明を舞台にして展開されますが、ここで描かれる学園物語はあくまで「そういう設定の番組」であって、本物ではありません。「生放送“風”」であって生放送ではなく、「学生“風”」なので卒業生の日和も制服を着るし玲明生ではないこはくにも出番が回ってきます。そんな「本当ではない世界」において、「女性アイドル」がにわかに存在感を増しました。本編(作中「本当の世界」)においては男性アイドルがアイドル業界を席巻していますが、『蛮カラ学園』と『ハイカラ学園』の関係性では逆転していて、『ハイカラ学園』が本編で『蛮カラ学園』がおまけ扱いです。

 学校が舞台になる中でそもそも学校に通っていないこはく、これまで描かれることのなかった女性アイドル、陣の青春の話など、数々の“取りこぼし”に目を向けられる話でした。

おまけ)セクシー女教師陣子ちゃんの武勇伝は完全にズ!時代の七不思議のそれ(章臣……)。ここも「夢ノ咲七不思議編」の前振りだなぁと感じる部分です。

■土着信仰まわりの話:ホワイトブリムと色彩百花

📝 ≪ポイント≫ホワイトブリムと色彩百花

  • 二本合わせて土着信仰を取り巻く状況を再提示
  • ホワイトブリム ⇒ 「地元の有力者」たち側からみた物語と「惰性による伝統」
  • 色彩百花 ⇒ 深海一族側視点の復習要素と七不思議に繋がる花畑

 土着信仰の話題をアイドル史の流れに合流させる上での前準備ストーリー。色彩百花については夢ノ咲編およびNEW COLORでの斑や光の前振り要素も。

 

 ホワイトブリムは「夢ノ咲地元の有力者はだいたい深海一族の土着信仰と縁がある」設定に踏み込んだストーリーです。貴族の遊戯『潮干狩り』のルールは明らかに深海一族関連の伝承になぞらえられています。英智たちの代ではもはや惰性で続いているにすぎない伝統になってしまっていますが、「一年間で溜まりに溜まった鬱屈を吹き飛ばすための行事」という点は土着信仰の核部分がしっかりと残っています。「僕たちは過去から学ばない」(英智、10話)。地元の搾取の伝承が現代の夢ノ咲やESで繰り広げられていることと重ねられます。

 土着信仰の話題は主に奏汰/斑/颯馬を当事者に展開されてきましたが、地元の有力者側である英智/日和/司/桃李のバックボーンにも習慣レベルで息づいているというのがかなり好きな描写です。有力者たちの間に文化としてがっつり影響が残っているからこそ、グランドスラムであれだけ大がかりに古式体育祭が催されるのだなぁと腑に落ちました。グランドスラム英智と奏汰が巽とお弁当を作ったときに、「海から採れる塩は神聖なもの」という地元の価値観を教えてくれた描写も同じ方向性で好きです。

「都合良く構築された遊びの、ゲームの舞台でも、現実的な問題は決してなかったことにはならないね」(日和、エピローグ②)

 これはメタな意味もある台詞だと感じました。「男性アイドル育成ゲーム」として“都合良く構築された”ゲーム、あんさんぶるスターズにおいても、これまでスポットが当たってこなかった女性アイドルなどの問題が「なかったこと」にはならない。

 色彩百花は「夢ノ咲に『悪いもの』が発生しているのでは」と騒動になる話。時系列的には骨董市~SS予選間(十月末)がメインの出来事なので、夢ノ咲編の裏側にあたります。あの天満光でさえも負の感情に飲まれている……ように見える流れが圧巻です。ここに限らず『悪いもの』関連の描写は、「確かに負の感情を増幅させる怪異のようなものはあるかもしれない」現実とファンタジーのはざまのようなバランスでとても好き。でもなんでもかんでも『悪いもの』のせいではなくて、光にも負の感情が十分にあるわけで……という話はハイアンドローでも触れられました。

 色彩百花で舞台となる花畑は「水が悪いのか歪な花しか咲かない」。これは夢ノ咲編での「水から悪いものが伝わる」につながり、地下の民と海の民の関連性を示すものになっています。

■キャラ個別(嵐):PORTRAIT/時よ止まれ、お前は■■■

📝 ≪ポイント≫PORTRAIT

  • セブンブリッジで語られた「昔のアタシ」の実像(12話)
  • 時とともに失われたものと、得られたたくさんのもの(エピローグ③)

「ここで私までこの子たちを見放したら、誰がこの子たちの味方になってあげられるっていうんでしょう」(章臣、13話)

 公開順ではセブンブリッジ ⇒ PORTRAITの並びになるため、「1.5部のプロローグ」というよりも「セブンブリッジの補強」のイメージです。エピローグで章臣が語る「時とともに失ったものがあると同時に得られたものもたくさんある」という話は、そのままセブンブリッジのテーマに繋がります。

 嵐は慰霊碑の『あのひと』のことは「アタシに恋をしてくれた人」という風に言及します。そんな嵐が「恋してる人」は椚章臣。しかし章臣が嵐に向ける愛情は真や泉にも同等程度に向けられる、先輩/兄/ほんの少し大人としてのそれ。この幼少期の先に『あのひと』との出会いがあって、喪失があって……と想うとたまらなくなります。

1.5部のエピローグ

 ここでは「夢ノ咲編があったからこそ」の部分を「1.5部のエピローグ」として整理します。

■NEW COLOR/ポルターガイスト

📝 ≪ポイント≫ポルターガイスト

  • 黒根姉弟のその後
  • Pの「新しい友」NEGI、「旧い友」斑

 ブラックジャックエピローグで無事が示唆された黒根姉弟の「その後」が描かれる、まさしく1.5部エピローグ。NEGIが死んだ経緯も明示され、かなりわかりやすくなっています。

 NEW COLORでは様々な「ささやかな心の支え」が描かれます。

  • セブンブリッジ ⇒ PORTRAIT で描かれてきた、嵐の「アタシを見てくれるひと」
  • 子どもたちにとってのNEGIの思い出
  • 斑にとってのPや奏汰との思い出

 など。端から見るとたいしたことのないように見えることが、当事者にとっては欠いてはいけない心の支えに。

■the Universe/スーパーヴィラン

📝 ≪ポイント≫スーパーヴィラン

  • 夢ノ咲編を経た鉄虎中心、流星隊二年生の現在地

 ハイアンドロー ⇒ ブラックジャック ⇒ スーパーヴィラン の流れでの、南雲鉄虎の現在地。かなりハラハラさせられる描写の多い前半公開分でしたが、ブラックジャックの鉄虎の様子を見ていたためにそれほど心配をしていませんでした。

 ブラックジャックで斑に弟子入りそしそう……な流れがありつつ、実際に悪役の振る舞いをしてみることで「俺が愛せる俺」の姿の輪郭を確かめていきます。鉄虎が今回「俺は本気で努力をしてみたい」(大悪党13話)と声に出したきっかけのひとつは、ハイアンドロー/地球のへそ12話、15~16話の光との会話とひつぎに対する三点リーダーにあるのではないかと考えています。光との会話についてはハイアンドローの項目にて語っていますので、ここではひつぎとの会話を取り上げます。

▼15話 「たとえ死んでも、やりたいことがあるので」(ひつぎ) 「……」(鉄虎)

▼16話 「でも。どうか、できれば殺さないでくださいね(中略)――生きて、やるべきことが、明確になりましたから」(ひつぎ) 「……」(鉄虎)

 弱い自分を消してしまいたいとすら思っていた鉄虎に示される、「たとえ死んでもやりたいこと」と「生きてやるべきこと」。自分の身を危険にさらすだけでなく、周囲の信頼を裏切り、巻き込み、それを申し訳なく思いながらも「やりたいこと」を推し進め、「やるべきこと」を見いだしたひつぎ。ここの会話の三点リーダーで実際のところ鉄虎が何を思っていたのかは明言されないのでわかりませんが、努力の方向性の見つけ方に影響があったのではと思えます。

 その後、翠たちが助けに来たことで「努力は必ずしも報われないが、報われることもある」と証明された、と鉄虎は受け取ります(ハイアンドロー/エピローグ①)。そしてこれまでの経験を踏まえて「同じ事を繰り返しているだけ」ではない、目的達成のための行動の一端を見せます。その後のブラックジャックでの様子と合わせて、このあたりが転換点になった結果のthe Universeなのかな、と考えながら読んでいました。